今回は友人が二〇一四年の二月に出版した自身のある経験を語るノンフィクション「結婚という行動 アメリカで親友を守るために冒した危険とそれが愛について教えてくれたこと」を紹介する。著者のライザ・モンロイはシアトル出身で、ニューヨークにあるリベラルアーツカレッジを卒業後、しばらく勤めたのちにコロンビア大学などで論文指導の職などを経て現在はカリフォルニア大学サンタクルーズ校で創作の指導をしている作家だ。モンロイと筆者はカポエイラの道場で知り合った。何度か自宅のパーティに招いてもらったこともある。
この本は二〇〇二年ごろから数年に渡って、モンロイが友人のエミル(仮名)との偽装結婚の経緯を書いたものである。ところで、序文によればこの本の出版には連邦問題としての同性婚を提起するという明確な意図があるとか。エミルは中東の某国、この言い方に従えば「エミリスタン」出身のゲイ男性。エミルが国に帰ると処刑の危険性もあるため、アメリカにおける市民権確保のため二人が偽装結婚することになる。ただし、この読みどころは偽装結婚やこの二人の関係をさておいて、むしろモンロイ自身の性格や内面、恋愛遍歴などであろう。そこは「セックス・アンド・ザ・シティ」を彷彿とさせる。モンロイは当時恋人がいながらにして、エミルとの友情を優先し偽装結婚に踏み切ったことや、またロサンゼルスの芸能事務所に事務職として勤めていた際、職場の同僚だった気になる男がかつて高級古書専門の泥棒だったことなど発見するくだりなど、事実は小説より奇なりとつくづく感じさせてくれる。この本の最後では、エミルがなんとグリーンカードを抽選で当てたことにより、結婚の必要性がなくなり、めでたく離婚へ至り、その後に二人ともあるべき伴侶を得るというところで話は幕となる。
事実でありながら現代アメリカの政治的おとぎ話といった趣きの話であった。映画にするなら主演はエレン・ペイジあたりがいいと思う。