2013年7月29日月曜日

映画"Spark: A Burning Man Story"

上映会がひらかれた劇場にあった展示物。

 七月十日に映画「スパーク: あるバーニングマンの物語」(邦題仮)の上映会に行って来た。この映画はネヴァダ州の砂漠で毎年ひらかれているあの有名なバーニングマンフェスティバルの歴史や二〇一二年のバーニングマンの参加者ら数組を追ったドキュメンタリーだ。八十年代にサンフランシスコの浜でやっていた小規模なお祭がやがてネヴァダのブラックロック砂漠へ移り、現在のような巨大なものになる過程を当時の映像や写真をまじえながら創設者らのインタヴューで語っていく前半と、二〇一二年の参加者である芸術家らの出展作品の制作を追いつつ、バーニングマンの開催の様子を記録した後半に分かれている。ちなみに東京都下出身の若者に声をかけて、一緒に一緒に観に行くことになった。

 まず、バーニングマンの運営スタッフらがいかにも真面目そうな人々であったのが印象的だった。たしかにあれほどの規模の祭をひらくには厳正と能力が必要だろう。あと、ここは強調しておきたいが、運営スタッフには女が多い。その半数以上が女性という印象だ。
 九十年代の初期バーニングマンの映像もふんだんに使われていて、それも面白かった。特に九六年の回で発生したという騒乱の様子が印象深い。その事件はのちの運営のあり方にも影を落としているようだ。
 
 参加者のなかでも、ウォール街を燃やせ、というプロジェクトを実行したオークランド在住の芸術家オットー・ヴォン・デンジャーとその工房の面子はコミカルな魅力をはなっていた。このプロジェクトはバーニングマンに悪の象徴としてのウォール街を模したハリボテを展示し、最終的に燃やすといういかにもな作品であり、ウォール街占拠の運動のながれを受けたものらしい。全編にわたってバーニングマンの素晴らしさを紹介してはいるが、しかしバーニングマン関係の映像の見るたびにその参加者が白人ばかりだというのが目につく。それについては課題とすべきではないか。

 また、上映後には監督への質疑応答の時間と、上映会の来場者らの衣装を競うコンテストも設けられていた。ところでこの映画は八月からTunesなどで配信を開始。十月にはDVDも出るとのこと。



 帰りがけ、同行した若者から「あれがヒッピーってやつですか」と訊かれた。ヒッピー文化のながれは受けているが、九〇年代のレイヴカルチャーを経由しているのではないかと答えた。そもそも、六〇年代的ヒッピーカルチャーと九〇年代の連続性も気になるところではある。バーニングマンの創設者らや最初期の参加者には、それこそ確実にウッドストック音楽祭の経験者もいるとおもうのだが。そこに六〇年代のベイエリア的ヒッピーカルチャーとシリコンヴァレー的IT産業をの文化的、歴史的連続性をみいだす鍵もあるのではないか。

2013年7月25日木曜日

二〇一三年サンフランシスコ・プライド 

 六月三十日、サンフランシスコ・プライドを観に行った。去年は金曜日からサンフランシスコに滞在したが、今年はあえなく日曜日のみ。それでも面白かった。今年のプライドはブラッドリー・マニングの写真がいたるところにあったのが印象的だった。聞くところによると、今年のプライドではマニングを名誉参加者として推す声があったが、運営側がそれを拒絶し、その運営の判断に反発した無数の参加者らがあえてマニングへの連帯を積極的に表した結果、マニングのイメージがあふれ返ることとなったようだ。
 

 
  サンフランシスコには十時過ぎにグレイハウンドにて到着。バスターミナルのすぐ隣がパレードの詰め所となっており、出場を待つ人々の間を通って、ダウンタウンの目抜き通りであるマーチャント通りへとわたる。するとすでに人でごった返しており、また有名人の隊列が通りを練っていた。まず印象に残ったのはカリフォルニア州選出の下院議員でサンフランシスコともゆかりの深いナンシー・ペロシの隊列である。あと、有名人の隊列ではシャイアン・ジャクソンが気になっていたので、近くでみられてよかった。ジャクソンは想像していた通りのキャップにTシャツというラフな格好であった。
 
今回も去年に続きフェイスブックとグーグルが大きな隊列を出していたが、今回はフェイスブックに社長のマーク・ザッカーバーグが参加していた。去年はグーグルの方が目立っていた気がするが、すると来年はセルゲイ・ブリンが現れることもあり得るのではないか。また、他にもマイクロソフトやインテル、ジンガなど有名どころのIT企業は軒並み参加していたと考えてよい。

 
各教会など宗教者の隊列や、企業や地域や各人種や民族、また警官や保安官や軍人などなどの公務員、大学や高校などの学校から参加している団体などどれも見どころある。ソフィア大学というパロアルトにある大学の隊列にはその学生とおぼしき男の子二人が全裸で参加していた。サンフランシスコらしい光景である。今回はおぼえている限り、全裸の参加者はその二人もふくめ、三組、計五名いた。





 やっと終盤にさし掛かったところでフリーブラッドリーマニングの隊列。グーグルなどがそれに続き、しばらくしてからパレード自体はお開きとなった。今年のパレードはとにかく時間が長く、結局パレードが一通り終わった時には四時ごろになっていた。明らかに去年よりも長い。これよりパレードが膨張したら今後、どうなっていくのだろうか。
 
 
 通りをあとにして市庁舎前のイベント会場へと歩く。市庁舎前のありさまはまさに祭。老若男女がつどって踊るものあれば、語り合うものもある。トヨタが出しているDJブースではアーミン・ファン・ビューレンなどの単なる露骨なトランスをかけており、楽しげでまことに結構。それが去年となんら変わらないので、その空間ははたして去年から引き続いているのではないかと錯覚におちいるほどであった。

 十九時ごろ、会場もいよいよお開きとなってみなは家を目指し、片付けも始まる。ダウンタウンのアップルストアにちょっと寄ってからバスターミナルに向かい、道すがらブラッドリー・マニングのステッカーを横断歩道のボタンに発見。その日、会場にマニングがいなかったということが、とんでもない間違いであり、不条理であるような気がした。

2013年7月15日月曜日

グーグル見物記

 六月二十一日は金曜日、ある社員の方が招いてくれたためグーグルに見物に行った。そのグーグルの社員の人とは去年の感謝祭に友人の下宿先でひらかれた食事会ではじめて会い、そして六月八日にひらかれた食事会にも来ていたために友人ともどもマウンテンビューにあるグーグルへ招待したもらったのだ。ところでそのグーグル社員のおばさんというのが波乱万丈の経歴の持ち主。朝鮮戦争後に北朝鮮で生まれ、幼いころ家族ともども脱北を試みるも結局、その人しか果たせず、韓国にて、ある家の養子となり、成長してアメリカに渡り大学を卒業して働き、いろいろあって現在グーグルで会計監査をやっているという人物。一種の超人である。
 
 グーグルへは友人二人とともに計三人で訪ねた。朝の九時過ぎに筆者の暮らすサンタクルーズから友人の運転する車に乗せてもらい、一路マウンテンビューへ。グーグルへは十一時に到着。

 しばらく待ち、その社員の方に来てもらって、受付の端末で入館証を発行。受付の前にはロッククライミング用の壁があるのが印象的であった。そして、メインキャンパスへ移動。グーグル本社は大学のようであるためか、キャンパスとも呼ばれる。滞在時間は三時間半くらい。結局、食堂と庭しか見て回れなかったが、やはりそれなり面白かった。

 グーグルにはいくつも食堂があるらしい。それらはみな無料である。訪問者もあらゆるものを無料で受け取ることができる。また、館内には生活に必要なあらゆる設備がそろっているらしく、休日にも洗濯のために会社に来る社員もいるとか。
 われわれは大きな食堂に入った。食堂は新しい清潔な印象を与え、大学のそれを思わせる。また、社員にかぎらず訪問者や観光客と思しき人びとも多い。社員はあらゆる人種がおり、特にインド系と中国系と思しき人が目立つ。食堂には、ピザやインド料理や、ヴェトナム料理、中華料理に和食、メキシコ料理にヨーロッパ風の料理、サラダバーやいくつものデザートがあり、野菜中心である。おそらくはさまざまな文化に配慮した結果野菜中心となるのではないか。また、ヴェジタリアンやヴィーガンも多いのだろう。そして、繰り返すがこれらの料理はどれも一切が無料なのである。

 食後を庭を散歩。庭にはところどころに彫刻などの美術品がおいてあり、スポーツの設備があって社員らがバレーボールやサッカーなどの球技に興じている。その日は庭で大規模な昼食会がひらかれていて、テントの下におかれた卓と椅子にて列席者が語らっていた。
 また、われわれは直接みることはなかったが、その庭に隣り合う建物の中にはジムがあり、プールもあるとか。

 しばらく庭を散策して、サンドイッチ屋にむかう。そこでサンドイッチを二つもらい、これを土産とした。そして、土産物屋へ案内されたところで、社員の人は仕事に戻らねばならないということで、お別れする。その後、土産物屋をみて、帰宅の途につく。現代のテレームの僧院を目の当たりにした見物であった。

 

2013年7月10日水曜日

映画 "The Internship "






 六月の第三月曜日、ショーン・レヴィ監督、ヴィンス・ヴォーン脚本主演の映画「インターンシップ」(邦題仮)を観て来た。それというのもその週の金曜日にあるグーグルの社員の人からマウンテンビューにあるグーグルの本社への見学に招待されたので、事前に予習と復習をしておこうと思ったのだ。グーグル見学については後述。

 映画はグーグルを舞台としたコメディならばこんなものかという感じ。ブロマンスの要素もあった。あらすじ。セールスマンをしていた中年男二人が情報革命の影響によって仕事を失う。そこで、恐れ知らずにもグーグルの面接に申し込んでみると、なんと研修への許可が出る。そしてグーグルという不思議な未知の世界にとびこむというお話。ちなみにその主人公のもう一人の方はオーウェン・ウィルソンだったりする。

 新しい技術によって職を失った中年男がいまや古びた価値観や能力を生かして新時代に活躍するという筋をみるとショーン・レヴィの前作「リアル・スティール」をも彷彿とする。また、映画のつくりは相当に古典的なハリウッド映画の型を踏まえている。要するに単純明快。しかし、グーグルという月並みならざる題材を扱うにあたってはこんな単純さが必要だったのかと。つまり、この映画で重要なのは主人公の境遇や話の内容ではなく、あくまでグーグルや、それをはじめとするシリコンヴァレーの文化なのだ。


 グーグルやシリコンヴァレーに関心にあるの人なら観ておいて損はないと思う。