2013年10月20日日曜日

フォーサムストリート祭

 九月二十九日は日曜日、サンフランシスコはフォーサムストリートでひらかれたフォーサムストリート祭に行って来た。フォーサムストリートは革やゴム、緊縛などの愛好家らが集まる通りであり、そうした人々に向けたバーやクラブ、洋品店やハッテン場などでにぎわっている。サンフランシスコのゲイストリートというとカストロであるが、玄人向けのフォーサムは一般向けのカストロとは一線を画す。フォーサムストリート祭はそこでひらかれる年に一度の祭典である。

 前日、二十八は土曜日にサンフランシスコ入り。夕方の十七過ぎから十九時ごろにかけて、会場のフォーサムストリートを歩いてみた。実は筆者は二〇〇九年の十一月にサンフランシスコに滞在した際も、ホストの案内でここに来たことがある。土曜の夕方であっても静かなものだ。ところがフォーサムストリートと交差する九番通りと十番通りの間の区画のあたりにて、Tシャツに短パンという格好の二人連れの男とすれ違った。その内の一人が俳優のラッセル・トーヴィーだと気付いたのはまさにすれ違いざまであった。思いがけぬ遭遇にしばし呆然となってしまった。トーヴィーはジョナサン・グロフ主演の新しいドラマの撮影のためにサンフランシスコに滞在しているらしい。

 翌日、一時過ぎに会場へと到着。今回はバークレーから地下鉄で最寄の駅である市庁舎駅までむかったのだが、目的駅が近づくにつれ、列車の中にみるからにそれらしい人が増えてくる。これも祭の盛り上がりを明かす道具立てのひとつというものだろう。

 会場への入場は寄付制であり、今回は最低十ドルから。ただし、寄付なので払わなくてもいいのかも知れない。会場となっている区画へ入るやそこは街角に出現した変態の遊園地。遊園地とあっては見世物あり、体験ブースあり、マスコットキャラありの素晴らしいにぎわい。とりあえず、前に進むと、道に組まれた舞台にてキンク・ドット・コムというエロサイトによるSMショーを演っていた。その模様などはこの記事で写真をを見られる。やはり、縛りといい、女王の責めといい、奴隷の耐えてあえぐ姿といい、一々堂々としていて見事なものだ。そして背中を打つバラ鞭や乳首を責める電流の出る棒などで奴隷を痛めつける女王様方の手つきにはどこか愛と思いやりを感じられる。

 また、その舞台の裏には南方カリフォルニア緊縛(So Cal Shibari)という縄師の集団よる縛りの体験コーナーもあった。その中には紫の鬘を被りセーラー服を着た日本人と思しき若い女の縄師もいた。こうした人にはますます活躍して欲しいものだ。ちなみに日本語の縛りという語そのまま英語には"Shibari"として定着している。

 会場内には他にも尻叩きの体験ブースや、変わりどころではお馬さんプレイや犬プレイの展示ブースが並ぶ。さらにはSMなど特に関係なく財布やベルトなどの革製品を売っているブースもある。みな、見ているだけで楽しいものである。音楽の舞台ではゲストの一組としてハーキュリーズ・アンド・ラブ・アフェアが来ていたのでしばし聴き行った。

 七時ごろいよいよおひらきとなり、会場が撤収していく。そのさなか、会場の一角に位置し、二〇〇九年に筆者も一度来たことがある緊縛をコンセプトとしたカフェ、ウィッキド・グラウンズを訪ねてみた。そこもあえなく閉まるところだったが、二〇〇九年に会った店員がいたので挨拶してみた。また折に触れ訪ねてみたい気持ちのよい感じ店だ。

 会場をあとにし、バスの時間までマーチャント通りのコーヒー・アンド・ビーンズでしばし休むことにした。すると、店の中には恋人か夫同士と思しい革ズボンをまとった三十代くらいの男二人がいる。間違いなく祭から帰って休んでいるところなのだろう。そうした光景を目にするとつくづく祭の余韻を感じたものであった。

 ところでこのフォーサムストリート祭はいまだ日本語での情報に乏しいらしく、ブログ記事などもこの記事くらい見つけられなかった。せっかく日本が世界に誇る縛りの文化を紹介する場所でもあることだし、これからどんどん日本でも知られて欲しいものである。
 
 



 

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